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『関係としての演劇』始動

『関係としての演劇』
-次代を担う創作者と地域が紡ぐ、新たな対話のかたち-

演劇は舞台の上で完結するものではありません。
それは「関係」として⽴ち上がり、「共同体」の輪郭を揺るがしながら、⼈と⼈のあいだにある何かを⾒つめる作業です。
若⼿アーティストたちが豊岡という⼟地に滞在し、⾔葉にならない気配や沈黙に⽿を澄ませながら、創作と対話を重ねていく。そこに⽣まれるのは、⼀⽅向的な物語ではなく、複数の声が響きあいながら成⽴する「多声的な共同体」そのものではないか。
豊岡演劇祭が構想するこのプロジェクトは、演劇を“上演”としてだけでなく、“関係を⽣む⽅法論”としてとらえ直す挑戦でもあります。
舞台芸術がいかにして場所と結びつき、⼈と⼈とのあいだに多様性を⽣み出すのか。
この企画はその問いに、創造を通して応えていきます。


かつて豊岡演劇祭フリンジプログラムで鮮烈な印象を残した若⼿アーティストたちが、再びこの⼟地に集います。2025 年度、彼らは豊岡の各地に滞在し、地域の⾵⼟や記憶、⾔葉にならない気配に⽿を澄ませながら、創作と対話を重ねていきます。その営みは、⼀⽅的な物語の制作ではなく、多様な声が響き合う「多声的な共同体」を紡ぐプロセスです。
本企画は、アーティストが⼟地と深く出会い直し、地域とともに時間をかけて関係を築き、作品を育む「関係としての演劇」を重視しています。彼らの創作の中で⽣まれる⾔葉や声、そして滞在中の記録は、公開コラムやリーディング、トークなど、多様なかたちで地域と創作の現在地を共有し、地域社会の輪郭を揺るがす「対話の場」として機能します。
この取り組みは、アーティストにとって深い創作への⾜がかりとなり、地域にとっては芸術が⽣活と交差する豊かな時間となるでしょう。そして豊岡演劇祭にとっては、公式プログラムの可能性を拡張し、演劇が「多様性を担保する共同体の装置」としての役割を改めて提⽰する、未来への挑戦となります。
豊岡演劇祭がこれまで育んできた関係性を⼟台に、次の⼀歩を共に踏み出すこの挑戦が、未来の演劇祭のあり⽅そのものを豊かに塗り替えていくと私たちは確信しています。

豊岡演劇祭プロデューサー/コーディネーター
松岡⼤貴

▼滞在アーティスト

私道かぴ

【コメント】
『関係としての演劇』によせて
2022年に初めて豊岡演劇祭に参加して以降、気が付けば上演のため毎年豊岡に通うようになりました。今年もこうして訪問の機会を頂けたことを嬉しく思います。
これまで、会場だった江原、上垣守国養蚕記念館を見学させて頂いた養父など、住民の方とお話できた地域もありつつ、そこは大きな豊岡市、まだまだ出会えていない地域がたくさんあります。知りたいことは山ほどあって、お祭や洞窟、鉱山や温泉の営み、山々に住む動物たち。そして、ここでの暮らしのこと。滞在するなかで、少しずつ教わっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【プロフィール】
1992 年⽣まれ。作家、演出家、アーティスト。京都を拠点に活動する団体「安住の地」所
属。⾝体性を強く意識した演出と、各地に実際に滞在し聞いた話を基に作品をつくる。近
年はお祭りや養蚕、流域や団地など⼟地とつながりの深いテーマで制作している。⾝体感
覚をモチーフにした戯曲『いきてるみ』で第 19 回 OMS 戯曲賞佳作を受賞。脚本・演出を
担当した短編演劇『アーツ』が第 16 回せんがわ演劇コンクールにてオーディエンス賞を
受賞。2023 年度 ACY アーティスト・フェロー。2024 年に豊岡演劇祭でも上演した『か
いころく −⼯⼥編−』にて第 11 回北海道戯曲賞⼤賞を受賞。

⻄田悠哉

【コメント】
豊岡には良い思い出が沢山あります。
初めて行ったのは、無隣館4期生の合宿の際でした。
その後はスタッフとして豊岡演劇祭に何度か参加し、昨年は初めてフリンジの場で自分の作品を発表しました。昨年末には演劇人コンクールでもお世話になりました。

行く度に感じることは、文化と自然、伝統の独特の共生の仕方です。
ここまで「演劇」という言葉がカジュアルに根付いてる地域も珍しい一方で、当然そこには摩擦もあると思います。
これまではあくまで「ゲスト」として見えていた側面が、今回の滞在の機会を通して、新たな豊岡の姿に出会い直す機会になればと思います。

【プロフィール】
1993 年生まれ、東京生まれ富山育ち 京都大学大学院 人間・環境学研究科 在学
⻘年団 所属。豊岡演劇祭 2024 に『悪態 Q』(豊岡公演)で参加。
演劇人コンクール 2024 にて『マッチ売りの少女』の上演にて最優秀演出家賞を受賞
2024 年 11 月より京都 KAIKA の芸術監督に就任。