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Program

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交流プログラム

国際交流プログラム
『交差する辺境』

日時

[Group A] 9月12日〜16日
[Group B] 9月19日〜23日

豊岡演劇祭は、2020年、コロナ禍のただ中に始まりました。

接触や移動が制限され、人や地域とのつながり方そのものが問われるなかで、私たちは舞台芸術のあり方を都度捉え直してきました。本プログラム「交差する辺境」は、こうした背景を元に構想されました。

私たちが関心を寄せているのは、都市でも中心でもない場所──それは地理的な意味にとどまらず、価値観や歴史、アイデンティティも含みます──のそれぞれの周縁における文化実践が、世界の変化と深くつながっているという感覚です。

この度、本プログラムに世界36か国から本プログラムへの参加の応募がありました。

世界各地から集まったアーティスト、プロデューサー、研究者たちが、それぞれの文脈における関心や実践を豊岡に持ち寄り交差させていきます。

新たな網の目のような対話と協働の可能性が、ここから立ち上がっていくことを願っています。

[参加者]

Group A – 9月12日〜16日

Arby Hamiya (Philippines / Based in Manila)

フィリピン出身の多才なグラフィックデザイナーであり、現在は分野横断的な実践へと活動を広げている。

近年は、さまざまなクリエイティブプロジェクトにおいて、制作・パフォーマンス・デザインなど多様な役割でコラボレーションを行ってきた。

Para Sa Sining Collaboratoryのエグゼクティブ・プロデューサー、Kapwa Movement Projectの創設メンバー、そしてHUB: Make Labでのコラボレーターとして、協働とコミュニティに根ざした芸術活動に取り組んでいる。彼女の文化的実践は、地域コミュニティとともに新たな作品を創出し、今後はプログラムやフェスティバルの企画にもつなげていくことを目指している。


Angga Kusuma (Indonesia / Based in Dumai)

インドネシア・スマトラ島の港町ドゥマイ出身の演劇作家・パフォーマンス研究者。

彼の実践は、警備員の詰所や屋台のコーヒースタンド、川辺といった日常の儀礼や見過ごされがちな空間が、いかにして権力・記憶・不条理の「非公式な舞台」となりうるかを探究している。
周縁地域で育った自身の経験を出発点に、彼の作品は常に問いかけます——私たちの社会的現実を支えている「見えないパフォーマンス」とは何なのか?

サイトスペシフィック・パフォーマンスやパフォーマティヴ・エスノグラフィー(演劇的民族誌)といった手法を用いながら、退屈、待機、語られぬ社会的緊張から生まれる身体の言語を解体し再構築する。
周縁と周縁のあいだに対話を生み出すことに関心を持ち、スマトラの港町からの視点を持ち込むことで、他の非中心地域が持つ固有の社会的風景と共鳴し合い、ローカルな特異性のなかに潜む普遍的な真実を見出そうとしている。


Nuttamon Pramsumran (Thailand / Based in Tokyo & Bangkok)

タイ出身のアーティスト・著述家。

2018年にバンコクで「Circle Theatre Bangkok」を共同設立。これまでに『Loei Art Fest』(2021年)や、タイと日本の間で展開された『Parallel Normalities』(2021〜2023年)など、サイトスペシフィックかつコミュニティベースのプロジェクトに携わってきた。

現在は東京を拠点に海外で暮らすタイ人の個人および集団の物語を通じて、移動(Migration)というテーマを探究しており、2025年7〜8月には台北の「Treasure Hill Artist Village」でアーティスト・イン・レジデンスとしてこの探究をさらに深めている。現在は、原宿・渋谷・世田谷に眠る「暗渠(あんきょ)」に着目し、それらが都市生活や移民たちの経験とどのように結びついているかを調査している。


Woo Yat Hei (Hong Kong / Based in Hong Kong)

香港出身のダンサー/パフォーマー/インディペンデント・アーティスト。

近作『Burn Out Nijinsky』(2025年)では、パフォーマーの労働と内面世界をテーマに、間テクスト性・パロディ・風刺といった手法を通じて、「個人がいかにして歴史や社会の産物となるのか」という問いに取り組んでいる。

これまでの主な作品に、『Traffik Is-Land』(2024年、香港・西九文化地区Freespace Dance/HOTPOT東アジアダンスプラットフォーム)、『I Drag Deep Thought Word』(2023年、ROOM712)、『Konstantin’s Video Essay』(2022年、Institute of Imagination)などがある。

また、異分野横断型のコレクティブを結成し、沙頭角(Sha Tau Kok)にある新樓街(San Lau Street)周辺におけるフィールドワークを実施。地域的・構造的要因によって形作られる力学の交差と相互作用に注目し、リサーチを展開している。


Tzu-Ching WU (Taiwan / Based in Taipei)

台湾生まれ、台北在住のアーティスト。

台北芸術大学舞台デザイン学科にて美術(舞台美術)専攻。現在、アーティスト・コレクティブ「House Peace」のメンバーであり、国立劇場・音楽ホールのレジデント・アーティストを務めている。

舞台美術を背景に持ち、演劇と空間のあいだに生まれる可能性の創出をテーマに活動している。また、映像アートやインスタレーション、XRインタラクティブ・パフォーマンスといった分野を横断する空間デザイン作品も手がけている。


Group B – 9月19日〜23日

Amos (Indonesia / Based in Yogyakarta)

インドネシア出身のリサーチャー/パフォーミングアーツ実践者。

歴史学を背景に持ち、アーカイブ資料、歴史的ナラティブ、脱植民地主義・ポストコロニアルの諸問題に取り組んでいる。

ジョグジャカルタを拠点とする学際的コレクティブ「Kolektif Arungkala」の共同設立者として、記憶、ミクロヒストリー(微視的歴史)、批評的枠組みに基づく舞台芸術、そして社会に関わる芸術実践の交差点を探究している。


James Harvey Estrada (Philippines / Based in Binangonan & Angono)

フィリピン出身の教育者・作家・演出家・パフォーマー。

アジア地域を中心に活動しながら、連帯・フェイクニュース・人権といったテーマで国際共同制作に取り組んでいる。

マニラにあるフィリピン国立工科大学(Polytechnic University of the Philippines)にて、放送パフォーマンスにおける演劇と映像演出・技術を教える講師を務めている。

2022年と2023年には、東京芸術祭ファーム「アジア舞台芸術人材育成キャンプ」の共同ファシリテーターとして、東京でのリサーチ活動を行うアーティストたちを支援。また、2023年にはドイツ・ベルリンのテアター・トレフェン国際フォーラムにも参加。

初の戯曲作品『Maikling Dasal, Mahabang Gabi』(短い祈り、長い夜)は、海外で薬物運び屋として逮捕されるフィリピン人労働者(OFW)たちの物語を描き、UPTC戯曲祭にて最優秀オリジナル脚本賞を受賞。その後、フィリピン各地で上演されてきた。

最新作『Pagkalinga: Vibrations and Rituals of Care(ケアのためのセレモニー)』は、2024年9月の豊岡演劇祭にて初演された。

これまでにインドネシア、マレーシア、シンガポール、韓国、日本、アメリカにて作品の上演や展示を行っている。


Ohelen (South Korea / Based in Seoul)

ソウルを拠点に活動するマルチディシプリナリー・アーティスト。

即興音楽、身体表現、ビジュアルアートの交差点に位置する実践を行っている。

声や生演奏、身体の動きを融合させ、アイデンティティ、記憶、変容といったテーマを探求する没入型のサイトスペシフィック・パフォーマンスを創作している。

コレクティブ「Odd Lips」の共同設立者として、パフォーマンスの常識に挑みながら、社会的・環境的な問いを扱うコラボレーション・プロジェクトにも積極的に取り組んでいる。

演劇性・詩性・即興的な相互作用を通じて、パフォーマーと観客のあいだの境界を溶かしていくことに関心がある。


©Yukasa Narisada

Tomomi Onuki / 大貫友瑞 (Japan / Based in Tokyo)

1999年生まれ。アーティスト、建築家。

東京藝術大学大学院建築専攻修了後、ドイツのシュトゥットガルト州立芸術アカデミーでパフォーマンスを学んだ。建築設計に携わる一方で、舞台芸術の分野でも活動している。

彼女の実践は、人間が都市や自然を容易に書き換えてしまい、「今・ここに在る」感覚を失っている現代社会において、「えらくない身体」の可能性を探るものである。人間と環境とのあいだに新たな関係性を提案するパフォーマンスを創作している。

また、パフォーミング・メディア・アート・コレクティブ「pito」のメンバーとしても活動し、記憶や認知を通じて身体と空間の知覚を変容させるワークショップやパフォーマンスの制作にも取り組んでいる。


Jaeeun Kim / OUT OF BLU (South Korea / Based in Seoul)uma (Indonesia / Based in Dumai)

韓国出身の俳優であり、映像、詩、音楽、パフォーマンスといった多分野にまたがるアーティスト。

繊細な感情のやりとりや壊れやすい関係性、人と場所のあいだにある静かな空間に焦点を当てながら、感情や情景、人間関係のエコロジーといった作品を探求している。

一つの形式に自分を固定することなく、各プロジェクトごとにそのリズムや声が自然と立ち上がるように、メディアのあいだを自由に行き来している。

どの表現手法においても、説明ではなく「内省」へと観客を誘うことを目指している。


Pearlyn Tay (Singapore / Based in Singapore)

ジャンルや分野を横断する芸術の創作と発展のプロセスを支援することに注力するインディペンデント・プロデューサー。

既存の制作手法を解体し再構築することに関心を持ち、意図的かつ意味ある協働の場づくりを追求している。

アーティストやプロデューサーによる新たな実践の育成、そしてコミュニティおよびネットワークの構築に強い関心を持ち、Producers SG「Emerging Producers Programme(2024–2026)」への参加や、Morasum Networkの共同設立に携わってきた。

また、さまざまな分野で多様な立場から活動しており、これまでに以下のような団体と協働してきた:Esplanade – Theatres on the Bay(Seedlings 2025、Contemporary Performing Arts Research Residency 2024、International Presenters Visit Programme 2024)、*SCAPE(Street Art Residency 2025、Somerset Threads 2025)、Centre 42(Cor Machina 2024)など。

そのほか、インディペンデントな演劇作品のプロデュースも行っており、これまでに『Air in Skin』(2023)、『A Mirage』(2022)、『Erosion』(2021)などを手がけている。

お問い合わせ
ttf_inter_peripheries@toyooka-theaterfestival.jp
クレジット
主催:豊岡演劇祭実行委員会
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