- 吉田萌
現代社会において断片化され、失調していく身体を可能性として捉え、あらゆる事物の運動の起点となる〈メディア – 装置〉としての身体を再構築することを目指す。主な作品に『壁あるいは石、平たいメディウム』(2020/2024)、『ヴァカンス』(2024, KIAC アーティスト・イン・レジデンス プログラム, 豊岡演劇祭フリンジ)がある。俳優としては関田育子、バストリオ、マレビトの会等に出演。
トーク・ワークショップ
《ヴァカンス》から《秘境の地だ》へ――スケールを巡る旅の報告会
吉田萌
本トークでは、前作《ヴァカンス》から現在進行中の《秘境の地だ》へと続く実践について紹介します。
《ヴァカンス》では、都市生活と観光のように、過去と現在/未来、現実と想像といった異なる二地点を往復する身体のあり方を〈ヴァカンス的身体〉と名付け、城崎国際アートセンターにて一ヶ月にわたる滞在制作を行いました。ワークショップで浮かび上がった個々人の喪失の風景、竹野の地質遺産が持つ時間的積層、都市開発が加速する地元・福岡の空襲の痕跡など、これらのあらゆるスケールと接続し、現在地に還元していくための身体を獲得しようと試みていました。
現在取り組んでいる《秘境の地だ》は、その「スケール」の感覚をさらに発展させたものです。他者への畏れと信仰を出発点に、身体の範囲を超えたスケール――たとえば、大きな山を前にしたときのような、果てしない他者のスケール――に分け入り、応答と変容のプロセスを探る実践です。かつて兄が行った長距離走行の道を、自らもロードバイクに乗れる身体を獲得し、トレースする。畏れと信仰のスケールと対峙し、習得と失敗を繰り返す過程そのものを、現代における“行”として位置付ける。このような身体の運動によって、新たなスケール=〈秘境の地〉との遭遇を目指します。
トークでは、これら二つの作品をつなぐ「豊岡」という地、そこで育まれた気づきや問い、リサーチのプロセスを共有します。
-
備考
同時開催プログラム
吉田萌『『ヴァカンス』上映会と新作クリエイションに向けたリサーチ滞在』
